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コラム

柏木集保 重賞レース回顧

U局競馬中継でお馴染みの柏木集保が、先週の重賞レースを独特の視点で回顧します。 馬券総合倶楽部にて予想を提供中!


菊花賞


 勝ったスリーロールス(父ダンスインザダーク)も、2着フォゲッタブル(父ダンスインザダーク)も、さらには4着イコピコ(父マンハッタンカフェ)も春の2冠には不出走。秋の上がり馬だった。馬場状態が大きく異なったとはいえ、皐月賞の上位5頭も、日本ダービーの上位5頭もまったく違う馬によって占められた今年のことだから、未知の距離3000mの菊花賞ではさらにまた新しいグループの台頭があって不思議ない。そんな予測が現実になった「逆転の秋」。それぞれの各馬の距離適性うんぬんはともかく、この世代のトップグループの勢力図はまた大きく地殻変動した。

 レースの主導権を握ったのは、人気のリーチザクラウン。どうしても行きたがる気性で、現況では緩急のペース変更をこなしにくいタイプとあって、ほぼ予測された通り他を離しての単騎逃げ。同馬自身の3000mの内容は3等分して「59.9-63.2-60.8秒」=3分03秒9。理想をいえば中盤の1000mでもう少しラップを落としたかったかもしれないが(ハロン13秒台は1回だけ)、菊花賞を「3分04秒0未満」の時計で乗り切って勝った馬は史上たった2頭だけ。明らかにステイヤータイプが少なくなった近年、自身で主導権を握ってレースを作り、3分03秒台で乗り切った。結果はペースメーカーにとどまったのかもしれないが、自身で厳しいラップを踏んでこの走破時計。持てる能力はフルに出し切ったとしていい。仮にもう少しペースを落とせる部分があったら、最後の1Fになって急に失速の「12.6秒」に落ち込むことはなかったともいえるが、逆に早めに後続に接近され、もっと着順を下げた危険の方が大きかったと思える。

 ここは史上3位の3分03秒5の走破タイムに対応した上位馬の快走を素直に評価すべきである。逃げ作戦をとった人気馬が速い流れを作れば、最近ではごく稀になったが、その苦しい流れをプラス要素にして、秘める可能性が引き出されるライバルが出現するのは長距離戦のパターン通り。スリーロールスのここまでの3勝はすべて1800mだったが、中身の濃い前回の楽勝と、父ダンスインザダーク(自身の勝利も加えるとこれで菊花賞・4勝)の圧倒的な距離適性を考えるなら、距離延びてさらに前進の可能性にあふれていた。

「内枠の利を生かすために好位で折り合いたかった」という浜中俊騎手(20)も、変に下げ過ぎることなく挑戦者らしく積極的で強気だった。折り合いぴたり。スパートのタイミングも文句なし。このGI制覇は新星の人馬にとって、素晴らしく大きな自信になるだろう。有馬記念のころにはもっとたくましくなりたい。

 フォゲッタブルも若手の成長株=吉田隼人騎手(25)。それこそあと一歩だった。素質開花の兆しが見えた期待の血統馬に、セントライト記念で好走した直後にすぐさま「本番でも頼む」。騎乗を約束した関西のベテラン池江泰郎調教師の計らいに、東の吉田隼人騎手が燃えないわけがない。エアグルーヴ産駒の中では頭角を現すのが遅れたが、もう上昇一途だろう。菊花賞快走にフロックの付け入る隙はない。

 セイウンワンダーは、一時は完成されたのが早いかと思われた2歳チャンピオン。しかし、皐月賞・3着、そして文字通り底力と成長力を問われることになった厳しい内容の菊花賞も3着。ときにバランスを欠くような体型になりかけたこともあったが、牝系はメイショウサムソン、ガーネット、菊花賞のダテテンリュウなどが並ぶ日本を代表する一族。でありながら現代風にロベルトの3×4。どうやら一番タフなのがこの馬かもしれない。

 4着にとどまったイコピコは、上がり3Fメンバー中最速の34.8秒。リーチザクラウンが引っ張った流れは2000m通過地点でみると2分03秒1。菊花賞史上有数のハイペースになるから、折り合いをテーマに最後方近くに控えたのは失敗でもないが、秋の上がり馬はイコピコだけではなかったことが大きな誤算。結果として脚を余した印象を与えたから、四位騎手も陣営も少なからず心残りだろう。

 神戸新聞杯とは一変、今回は巻き返し可能なデキに見えたアンライバルドは、スムーズさを欠き失速し15着の大敗を喫してしまった。一族そろって大仕事をするのが3歳の春シーズンに集中する傾向はある。だから完成されるのが早いファミリーの出身であることはたしかだが、早熟とはまったく異なる。皐月賞でみせた爆発力を生かすには、2000m前後の方がいいのだろう。ぜひ巻き返して、本来のアンライバルドに立ち直りたい。

 ナカヤマフェスタも12着に大敗。心配された直前輸送は、当日の馬体重プラスマイナス0だから無事にクリアしたはずで、見せ場なしの凡走は意外だった。渋く、ときに反応が遅かったりするから長丁場向きと思えたのだが…。しかし、父ステイゴールドの一番いいところを受け継いでいるとするなら、まだまだ辿る過程の序盤も序盤。したたかなレースをするのは古馬になってから。もっとずっと後のことだろう。

2009年10月26日

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