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【ヴィクトリアM AI予想】不安要素に目を瞑るのもアリ!? AIの注目馬は波乱を演出できるか

  • 2024年05月06日(月) 18時00分

単勝オッズ2.9倍(2番人気)のジャンタルマンタルが優勝(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

ごく近年に限れば堅めの決着が続いている


AIマスターM(以下、M) 先週はNHKマイルCが行われ、単勝オッズ2.9倍(2番人気)のジャンタルマンタルが優勝を果たしました。

伊吹 陣営はもちろん、手綱を取った川田将雅騎手にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。素晴らしいスタートを決めて好位に取り付き、道中は先団の外めを追走。3コーナーで早くも先頭との差を詰めにかかり、4コーナーを3番手で通過しています。ゴール前の直線に入っても脚色はまったく衰えず、残り400m地点を過ぎたところで単独先頭に。そのまま後続を突き放し、結局アスコリピチェーノ(2着)に2馬身半の差をつけて入線しました。ジャンタルマンタルがずっと理想的なコース取りで周ってきた分、すぐ内を走っていたアスコリピチェーノは勝負どころへ差し掛かっても馬群の外に持ち出すチャンスがなく、窮屈な競馬を強いられる形に。スムーズならもう少し際どい勝負になっていたかもしれませんが、最大のライバルをスマートなレース運びで完璧に封じ込めたわけですから、本当にお見事です。

M アスコリピチェーノは残り400m地点を過ぎたところでインコースを狙ったものの、スムーズに抜け出すことができず、結果としてボンドガール(17着)やキャプテンシー(18着)の進路を妨害。騎乗したC.ルメール騎手には過怠金3万円の制裁が科されています。

伊吹 パトロールビデオを確認してみると、C.ルメール騎手が内に進路を切り替えようとしたその瞬間は、前を行くキャプテンシーとマスクオールウィン(15着)の間に一頭分くらいのスペースがありました。ただ、次の瞬間にマスクオールウィンがキャプテンシーの方へ併せに行ったため、その間で挟まれるような形に。悪質なラフプレイとまでは言えないものの、もう少し安全な進路を選ぶべきだったと思いますから、処分は妥当なところでしょう。各馬の今後に影響がないと良いですね。

M ジャンタルマンタルは昨年末の朝日杯FSに続く自身2度目のGI制覇。古馬相手のビッグレースでも注目が集まるのではないかと思います。

伊吹 前走の皐月賞も着順(3着)以上に高く評価して良い内容だったと思うのですが、やはり今のところはこれくらいの距離がベストなのかもしれません。もっとも、父のPalace Maliceは現役時代にダ12FのベルモントS(米G1)を、母のインディアマントゥアナは現役時代に芝11FのレッドカーペットH(米G3)を勝っている馬。長めの距離をこなせそうな血統背景の持ち主である点は頭に入れておきましょう。

M 今週の日曜東京メインレースは、上半期の古牝馬チャンピオン決定と位置付けられているGI、ヴィクトリアマイル。昨年は単勝オッズ7.6倍(4番人気)のソングラインが優勝を果たしました。歴史的な大波乱決着となった年がある一方、堅く収まる年もそれなりに多く、捉えどころのないレースと言う印象です。


伊吹 ストレイトガールが優勝を果たした2015年は、JRAGI史上最高配当となる3連単2070万5810円の決着。一方、ここ4年に限ると、3連単の平均配当は2万3175円にとどまっています。



M しばらく低額配当決着が続いているとはいえ、過去10年の単勝人気順別成績を見ると、やはり上位人気馬の好走率はそれほど高くありませんね。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気から7番人気の馬は2014年以降[6-5-7-42](3着内率30.0%)、単勝8番人気から12番人気の馬は2014年以降[2-3-1-44](3着内率12.0%)、単勝13番人気以下の馬は2014年以降[0-0-1-54](3着内率1.8%)となっていました。波乱含みの一戦ではあるものの、超人気薄の馬は好走率もそれなりですから、その辺も意識したうえで買い目を組み立てましょう。

M そんなヴィクトリアマイルでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、テンハッピーローズです。

伊吹 思い切ったところを挙げてきましたね。それなりに実績のある馬ですが、単勝人気順は下から数えた方が早いくらいのポジションにとどまるはず。

M テンハッピーローズは前走の阪神牝馬Sが勝ち馬から0.4秒差の6着、2走前の京都牝馬Sが勝ち馬から0.3秒差の7着。なお、3走前にはオープン特別の朱鷺Sを勝っています。ただ、重賞で馬券に絡んだのは2歳時のアルテミスS(3着)が最後。6歳である点も不安視されそうですし、積極的に狙おうと考えている方は少ないかもしれません。

伊吹 この馬が上位に食い込むようなら、久々の高額配当決着となりそうですね。Aiエスケープがチャンス十分と見ている点を踏まえたうえで、この馬のプロフィールと好走馬の傾向を見比べていきましょう。

M 最大のポイントはどのあたりだと考えていますか?

伊吹 顕著な傾向が出ているのは生産者別成績。2020年以降の3着以内馬12頭は、いずれも社台ファームかノーザンファームの生産馬でした。



M 好走数が多いノーザンファーム勢はもちろん、好走率が高い社台ファーム勢も侮れませんね。

伊吹 2021年に単勝オッズ75.2倍(10番人気)の低評価を覆して2着となったランブリングアレーも社台ファーム生産馬。ノーザンファーム生産馬と同等以上に高く評価して良さそうです。

M 社台ファーム生産馬のテンハッピーローズにとっては、大変心強い傾向と言えます。

伊吹 あとは年明け以降の戦績も素直に評価したいところ。前年に東京のGIを勝っていたような馬を除くと、好走馬の大半は同年に1マイルの重賞で馬券に絡んだことのある馬でした。



M 今年は東京のGIを勝ったことのある馬が一頭もいません。

伊吹 今年のメンバー構成なら、阪神牝馬Sで上位に食い込んだ馬たちを重視するべきでしょう。

M 先程も触れた通り、テンハッピーローズは今春の阪神牝馬Sで6着に敗れていますが、勝ったマスクトディーヴァとは0.3秒差で、3着だったモリアーナとは0.1秒差。条件に引っ掛かってはいるものの、大目に見て良い気もします。

伊吹 さらに、同じく2020年以降の3着以内馬12頭中11頭は、キャリア15戦以内でした。



M こちらもわかりやすい傾向。出走数が16戦以上の馬は、疑ってかかった方が良さそうですね。

伊吹 高齢馬はもちろん、若い頃から多くのレースを使ってきた馬も、あまり強調できません。

M テンハッピーローズはキャリア23戦の6歳馬。残念ながら、この条件にはしっかり引っ掛かっています。

伊吹 私自身の見立てに関して言うと、想定を見た段階では無印にするつもりでした。ただ、今年は特別登録を行った馬が15頭しかいないうえ、前年に東京のGIを勝っているような馬も不在。ここ数年とは少々様相の異なるメンバー構成ですから、テンハッピーローズにとってはチャンスですよね。Aiエスケープも高く評価しているわけですし、この馬が来るような大波乱決着の目に賭けるべきかどうか、もう少しじっくり検討してみようと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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